グリーン電力によるグリーン水素の製造

独立型エネルギー供給で拓く、水素社会の道

今回の水素を活用した事業戦略は、水素製造という新たな需要を通じて自然エネルギーの供給を大幅に増やすという目的にもつながっています。 現在、オフFIT制度の影響もあり従来より多くの自然エネルギーが電力系統に受け入れられていますが、これはあくまで系統上の空き容量に基づいた限定的な受け入れに過ぎません。 真にグリーン電力を活用してグリーン水素を大規模に生産しようとした場合、現在の系統ではその電力を支えることは難しいというのが現実です。 特に昼間は自然エネルギーによって需要を上回る電力が発生することもあり、系統の制約によって再生可能エネルギーの出力抑制が発生する場面も見られます。 さらにそうした余剰電力を有効活用しようと水素製造の計画を立てても、既存の電力ネットワークはグリーン電力のみを供給する構造になっておらず、 また、余剰分の調整を前提とした設計にもなっていません。実際には「グリーン電力のみを供給する」契約そのものが存在しないという制度上の課題もあります。 こうした現状を踏まえ、CEF株式会社は明確な判断を下しました。 最適なグリーン電力の供給とは、自らが構築した自社ネットワークに必要な自然エネルギー発電所を直接接続し、その電力を水素精製装置へと供給できる仕組みを構築すること。 この独立したエネルギー供給システムこそが、持続可能な水素社会と地方創生を同時に実現する鍵であると考えています。

バッテリーとタンク活用による運用の最適化

蓄えることで広がる、自然エネルギーの可能性

当社の自社電源ネットワークにバッテリー設備や水素タンクを設置することで、昼間に発電した電力を夜間に活用できる仕組みを構築しています。 これにより、太陽光などの昼間にピークを迎える自然エネルギーを時間を超えて有効利用することが可能になります。 さらに、昼間に製造した水素を夜間に使用することも可能となるため、電力供給の安定化だけでなく発電所の設計段階から最適な規模を追求する柔軟な計画が可能になります。

ベースロード電源の延命のための混焼技術の確立

老朽火力に命を吹き込む、水素35%混焼の挑戦

現在(2022年統計)、石炭火力発電所は全電源の約31%、LNG火力発電所は約38%を占めています。 一方、石炭火力はベースロード電源として位置づけられながらも、G7においては温室効果ガス対策のない施設を2035年までに廃止することが合意され、 2050年までにその廃止を実現するという国際的な公約も存在しています。 とはいえ、現実には石炭火力は依然として重要なベースロード電源であり、可能であれば延命し運転を継続することが、エネルギー供給の安定性を守るうえで極めて重要です。 今回当社が取り組むプロジェクトは、老朽化した石炭火力発電所(築50年以上)に対してバーナーの改修工事を実施し、 水素35%混焼の設備を実現するという画期的な技術の採用です。 この方式によって目的が達成された場合、化石燃料を使用する火力発電所の延命が比較的容易に可能となります。 また、廃止予定となっている火力発電所も同様の改修工事を施すことで、次世代ベースロード電源へのスムーズな移行を実現できるのです。

混焼技術の確立と専焼プラントの新設実現

系統を守りながら進める、柔軟な水素移行戦略

当社では、稼働中の火力発電所を購入し、水素混焼設備への改修を行うことで、 既存の電力系統を活かしたスムーズな水素発電への転換が可能であると考えています。 また、既存火力発電所を建て替えることで系統設備を維持しながら水素対応型に更新することも視野に入れています。 特に、系統容量が厳しい地域においては、系統枠の確保そのものが大きな課題となっていますが、 こうした地域では、既存火力発電所を戦略的に取得し、設備の改修・再構築によって脱炭素型の新しい火力発電設備へと移行することが可能です。 このようなアプローチにより、既存インフラを最大限に活かしながら、系統への負担を最小限に抑えた脱炭素化を現実のものとします。

専焼プラント

独自技術との連携で実現する、水素専焼の未来

混焼プラントの運転を経て、次のステップとなる水素専焼発電所の新設・運用においても、 欧州の発電機メーカーとの連携は不可欠な要素となっています。 現在、世界的に見ても 水素専焼に対応可能な発電機を提供できる企業はごく限られており その中でも先進的な技術を有する欧州メーカーが独自の技術的優位性を維持しています。 当社では、 この企業との協議を早期から継続的に実施 してきたことにより、 世界的に発電機の供給ラインが逼迫する中でも、タイムリーな設備導入が可能となる体制を整えることができました。

工業用水の活用と循環システムで支える、水素と地域の未来

水素精製に不可欠な水の供給については、これまで三池発電所の運営で使用してきた福岡県の工業用水を 引き続き使用する方針であり、増加分の供給にも県が対応してくださることになっています。 この結果、水素精製に必要な水量だけでなく、冷却用水も含めて、従前通り県の工業用水によって確保可能な状況が整っています。 また、構内にて大量の水を循環利用する設備を新たに構築する計画があり、 そのプロセスの一部として、温水の冷却工程を活用した魚介類の養殖事業を実施する予定です。 この養殖業は、農業以外の地域貢献策として取り組むもので、養殖された海産物は製品化し、 農産物と同様に地元販売および海外輸出を行い、新たな地元特産品としての定着を目指します。 さらに、養殖などに用いる循環水の品質を保つため、浄化システムをプロセスに導入し、 安心・安全な水環境の維持にも配慮した運営を行っていきます。

水素精製に必要な電気の緊急的な供給不足を補うための系統からの電力調達を確保

既存系統を活かした、安定した電力供給体制の構築

既存の火力発電所の改修を行う今回のプロジェクトでは、現在利用中の系統を引き続き使用することから、 売電に関して特段の問題なく事業を進めることが可能です。 一方、新設する水素精製プラントの電源確保については、新たに系統接続を申し込む形で進める計画です。 三池発電所(2号機、稼働中)およびその隣接地には、過去に三池発電所1号機(廃止済/156MWh)と 九州電力の発電所(312MWh)が存在していた実績があります。 この背景から、上流系統には最大500MWhの電源を接続可能な余力が依然として残っており、 九州電力にも前向きな姿勢でご協力いただいていることから、系統に関して大きな支障はないと判断しています。 この既存系統を活用しながら、電力需給指示に基づく緊急的な発電の最大化や、 気候変動や機器不具合による太陽光発電の出力不足といった例外的事態にも対応可能な 水素精製用電力の安定供給体制を構築していく方針です。

水素サービスステーション事業

未来の交通を支える、水素ステーションの設置と供給

現在開発が進められている水素燃料電池(FC)を搭載した商用車(小型・大型トラック、バス、フォークリフトなど)や 水素を利用する各種自動車は、2030年頃までに実用化と多車種展開が進むと見込まれています。 こうした状況を背景に、三池発電所構内に当社が設置・運営する水素ステーションにおいて、 協議会に参加する企業・団体に対し水素の供給を行う計画です。

三池水素利用協議会

地域とともに進める、グリーントランスフォーメーションの第一歩

CEF H2が設置・運営する水素ステーションのユーザーを特定するために、協議会が組成されています。 水素車両に特化した水素供給設備を設置し、水素の販売は協議会の参加メンバーに限定して実施されます。 水素製造設備が設置された地域の企業・団体が、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた具体的な行動として、 水素車両の購入とグリーン水素の活用に取り組みます。 また、この車両の運行を通じて、地域住民にもカーボンニュートラルへの参画を促す啓発活動とし、 地域社会に対してGX(グリーントランスフォーメーション)の必要性を訴える運動として展開していきたいと考えています。 さらに、水素燃料車両の導入台数を増やすことで、地域全体のGX推進活動の底上げが可能になると見込んでいます。